私ははっ、とした。

そうだ、あの一年前の遊園地で・・・。

---「綺麗だね、あのイルミネーション。」「うん・・・でも君ほどじゃないさ…なんてね」

「あははは…」

そこで、僕が言った、ことば。

「ほら、あれ見て…」「あの光の輪っか。」

「あと一年したら、君に別のリングをプレゼントしたいんだ。良いかな?」

そして、確かに…彼女ははにかんで笑ったんだ…。
だが、僕だって、その約束を忘れていたわけじゃない。その証拠がテーブルの上にあるあの小さな箱。

その中身を見せる前に「さよなら」されたんだ…。

もう、こうなったら黙っていられるか。泣くのがこちらだけなんて、エンディングとしてはあまりにもあっけない。

携帯を手にとって、彼女に電話をかける。今までのような日々のつながりの確認じゃない。もちろんむこうもそれを待っていることは、ない。

「はい、もしもし」彼女じゃない。しわがれた声が受話器から聞こえてくる。

「どちら様ですか?」
「私は…その…御宅の娘さんとお付き合いさせていただいてる…」
「あぁ、お話は聞いています」
「えっ?」
不意に彼女の母親の声が涙声になる。「とても…良い方…だって」
「どうされたんですか!?」
「あの子…昨日から意識がないんです」

…彼女は隠していたんだ。この僕に。ついに、どうにもならなくなって、「捨てた」んだ。

それから、僕は彼女に指輪をはめに行った。

すると、彼女の乾いた瞳が少しだけ潤んだ。どんな意味の涙だろうか。それが、とても、聞きたい。

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